【司法書士が解説】遺言執行者は単独で相続登記できる?
遺言執行者とは、遺言書に書かれた遺言の内容を実現するために、相続に関する手続きを行う強い権限をもつひとのことです。
強い権限をもつ代わりに、適切に役割を果たさなければ思わぬトラブルに発展する可能性があります。
本記事では、遺言執行者が相続登記を単独で申請できる場合とその際に留意しておくべき点について解説します。
遺言執行者は相続登記ができる
遺言書から死亡したひと(被相続人)が、遺言執行者に不動産の相続登記をしてほしいと考えていたことが明らかな場合であって、以下の2つの場合は、遺言執行者は単独で相続登記ができることになります。
- 相続させる旨の遺言
- 遺言執行者でもある相続人に対しての遺贈
この2点について説明していきます。
相続させる旨の遺言
相続させる旨の遺言とは、「不動産Aを長男に相続させる。」など、ある特定の財産を特定の相続人に「相続させる」ことを明記した遺言のことをいいます。
2019年7月1日以降に作成された相続させる旨の遺言がある場合には、2019年の民法改正により、遺言執行者が相続登記を単独で申請できることが明記されました。
もっとも、その遺言が相続させる旨の遺言かどうかは明らかでない場合もあります。
判断に迷う場合は、専門家に相談することをおすすめします。
遺言執行者でもある相続人に対しての遺贈
2023年の不動産登記法の改正により、相続人への遺贈を原因とする相続登記については、相続人である受遺者の単独申請が可能になりました。
相続人であり、受遺者でもある遺言執行者は、受遺者の立場として相続登記を単独で申請できます。
遺言執行者が負う義務
遺言執行者は、相続登記に関する遺言執行者の任務として、相続財産の目録の作成・交付義務を負います。
さらに、遺言執行者が相続登記を行うためには、膨大な必要書類を収集し、相続登記申請書を作成する必要があります。
単独で相続登記するリスク
遺言執行者が相続登記手続きに不慣れな場合は、手続きに時間がかかる可能性が高いです。
遺言執行者が職務を怠っていたため、相続登記が遅れたことにより損害が発生したと評価された場合には、善管注意義務違反による損害賠償責任、家庭裁判所による解任、刑事責任に問われるリスクがあります。
具体例として、相続登記を行う予定であった不動産について、相続登記がされていない間に、相続人の1人が勝手に不動産を売却し、売却の相手方が先に登記してしまうということが考えられます。
この場合、遺言執行者は相続人から損害賠償を請求されることもありえます。
まとめ
遺言執行者は相続登記を単独でできるものの、適切に役割を果たさなければ遺言執行者が大きな不利益を被ることもあります。
相続登記手続きに不安がある方は早めに司法書士に相談することをおすすめします。
当事務所の基礎知識
-
未払い残業代を請求し...
「未払いの残業代を請求したいが、証拠がない」と諦めていませんか。タイムカードのような確たる証拠がないからといって必ずしも残業代請求を諦めるべきだという結論にはなりません。本記事では、手元に証拠がない場合の対処法を解説しま […]
-
土地の遺産相続の期限...
故人の遺産の中に土地など不動産があった場合、 その土地も相続人に対する相続財産として扱われます。相続人は土地の相続について登記の手続きを取る必要がありますが、 その期限はあるのでしょうか。 結論として、不動産の […]
-
司法書士が行える民事...
民事裁判とは基本的に私人同士でのもめごとや争いごとを解決するための裁判になります。なお、私人とは私たち国民や一般企業のことをいいます。一般的に裁判といえば弁護士の仕事であるというイメージがあるかと思いますが、実は司法書士 […]
-
土地だけ相続放棄する...
人が死亡すると、相続が生じます。相続とは、被相続人の死亡時に被相続人に属していた一切の権利義務が相続人に包括的に承継することをいいます。ここでいう権利義務には、現金・預金、借金のほか、土地などの不動産も含まれます。土地の […]
-
相続した土地に抵当権...
被相続人の残した不動産を引き継いだ時に抵当権がついていたらどうすればいいでしょうか。そもそも抵当権とは何なのでしょうか。抵当権とは住宅ローンなどの有担保ローンのことをさします。有担保ローンとは金融機関などにお金を借りると […]
-
相続登記の義務化|施...
人が死亡すると、相続が生じます。相続とは、被相続人の死亡時に被相続人に属していた一切の権利義務が相続人に包括的に承継することをいいます。相続によって、土地や建物などの不動産の所有権が移転した場合、相続を原因とする所有権の […]
よく検索されるキーワード
司法書士紹介
【代表司法書士】
武藤 清隆
(東京司法書士会所属)
事務所概要
事務所名 | 武藤司法書士事務所 |
---|---|
代表司法書士 | 武藤 清隆(むとう きよたか) |
所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-7-3 ヴェラハイツ新宿御苑904 |
電話番号 / FAX番号 | TEL:03-3352-8601 / FAX:03-3352-8612 |
営業時間 |
平日:10:00~18:00 ※事前予約で時間外も対応致します。 |
定休日 |
土・日・祝日 ※事前予約で対応致します。 |